藤娘の頭に乗っかっているのは高級椎茸です

考察

「ねえ華子、明日ヒマでしょ?」

友人からLINEがきたのはとっぷり日が暮れたあと。
随分と急なお誘いですこと。
しかもなんで私がヒマだと最初から決めつけてるんだ、失礼な。

「明日、日本舞踊のリサイタル見に行こうよ。チケットあるから。」

”ごめん、明日はどうしても外せない用事があってー” とか私も断ってみたい。
ボーッとしているように見えるかもしれないけど、実は毎日充実した忙しい日々送っているのよアピールしたい。

でも背に腹は変えられない。
”芸術鑑賞” ってなんか響きからして素敵だし、日本舞踊は全く詳しくないけれど美しい着物は見たいもの。
翌朝友人が指定してきた場所に、ちゃっかりおめかしして出かけましたよ。
なんなら指定時刻よりも大幅に早く着いちゃったりして。
こういうことばっかりしてるから友人に「どうせヒマでしょ」とか言われちゃうんだよなあ。


劇場についてみると見渡す限りお上品なお着物をお召しになった高貴そうなご婦人ばかりで、それだけで私のテンションはバク上がり。
なんて着物って美しい衣装なんでしょう。
日本人女性にありがちな寸胴短足な体型を見事にカバーしつつ、その動きづらさから自然と所作は控えめで品があるようにならざるを得なくする。
まるでやり手のサラリーマンみたいじゃないですか。

実際に自分が着るとなるといろいろな制約が関わってくるから面倒だけど、見ている分には最高の目の保養になることだし、もっとみんな普段から街中でも着物着るようにすればいいのに。



キョロキョロ周囲を観察しているとあっという間に開演時刻はやってきて、会場は真っ暗になった。
いやでも高まる期待感、この瞬間何度味わってもたまりませんな。

ちょうどいい具合に焦らした後、パッと舞台が照らされ視界に広がる大きな藤の木。
隙間がないほどにビッチリと藤の花が枝から垂れ下がり、軽く鳥肌が立つほど見事に一面淡い紫色に染まった。

そこへ ”そそそそそ・・・” とすり足(?)で現れる顔を真っ白に塗った美しい女性。
『藤娘』だ。

舞台用の着物は普段使いのものと比べると格段に美しく刺繍など細部にまでこだわっていて、それだけで芸術品と言っても過言ではないほど見事なものだった。
幾重にもまとった着物はおそらく立っているだけで重いだろうに、難なく踊る姿はさすがプロといったところ。
私だったらもし転んだりしようもんなら、自力では起き上がることも不可能だろう。

肩には藤の花が垂れ下がった枝を担いでおり、それを妖艶な動きで回してみたり体にまとわりつかせてみたり。
日本舞踊のことは何もわからないが、その動きに視線は釘付けになった。

が、一点どうしても気になってしまうことがあって。
それは頭にかぶった黒塗りの笠。

この形状といい艶といい、一目見た瞬間私には ”立派な椎茸” に映ってしまったのだ。

一旦椎茸だと思い込んでしまうと、もう終わり。
やることなすこと全てが私の目には、椎茸の所業に見えてしまうようになってしまった。


あれ?藤娘ってどういうストーリーだったっけ?
藤の木の下に生えた椎茸が ”アタイだって綺麗な花咲かせたいのよー” って化けて出てきちゃったってお話なのかな。
で、枝を一本折ってそれを振り回しては”とったどー、とったどー” って喜んでいる、と。

切ないじゃないの。
健気じゃないの。

椎茸だって美味しいよ?栄養だってたっぷりあるよ?
海外でも低カロリーでダイエットに良いって評判で ”SHIITAKE MUSHROOM” って立派な名前つけてもらって人気あるんだから自信持って!

なんて舞台上で躍り狂う椎茸に心の中でエールを送り続けた結果。
私の心(胃袋)は椎茸に鷲掴みにされてしまった。

帰りに ”しいたけしいたけ” 言い続ける私を冷めた目で見る友人をよそに、藤娘の頭に乗っかってたのと負けないくらい大きくて肉厚な超高級椎茸を奮発して購入し、その晩丸ごと煮物に入れて美味しくいただきましたよ。
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本当の藤娘や日本舞踊に関しての知識を求めている方は↓をお読みください

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