好物は最初に食べるべきか、最後に食べるべきか

考察
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嫌いな食べ物があるということは周いに悟らせてはいけない

華子、他の人と食事をしている際あなたが苦手なものが出されても決して”まずい” とか ”嫌い” とか言ってはいけませんよ?
あなたと食事を共にしている人の中には、その食材が好物の人がいるかもしれないんだから。
その人の気持ちを考えてご覧なさい。
自分は美味しい美味しいと言って食べているものをあなたが否定したら、その人はきっと悲しい気持ちになってしまう。
どうしても食べられない時は、誰にも気づかれないようにそっとお皿の端に残させてもらいなさい・・・

母が幼い私によく言って聞かせた言葉だ。
幼いながらこの教えは “そりゃ確かにそうだな” と私の心に響き、今でもしっかり守っている。

ちなみに私は唯一きゅうりが苦手で長いこと食べられなかったのだが、乾燥させてチップス状態にして食べて慣れる、という地道な努力をしてきたおかげで、今では問題なくみずみずしい形態のものでも食べられるようになった。
それ以外は特に食べられないものはなかったので、お皿の片隅にそっと残すなんていうことは滅多にしないで済んでいたのだが、ある日複数の子供の頃からの親しい友人たちと食事に出掛けた時の話。

助け舟を出したつもりが・・・

美味しいと評判のイタリアンに行った私たちは楕円形の大きなテーブルに案内され、私の左隣には親友Nちゃんが座った。
Nちゃんとは家が近かったこともあり、小学校からずっと仲良くしていて、喧嘩はおろか気まずい雰囲気になったことすら一度もない間柄だ。

温厚で少し気弱な面を持つ彼女を、正反対の性格の私はことあるごとにフォローしてあげてきたように思う。

好きな人から電話がかかってきた時に ”緊張して話せない!” と口をパクパクして私に助けを求める彼女の手から携帯を受け取り、声色を変えてNちゃんのフリをした私がかわりに話して、デートの約束を取り付けてあげたこともある。
二人で新宿の家電量販店で買い物をしていた時に、私を差し置いてNちゃんのスカートの中を盗撮する不届き物をとっ捕まえてあげたこともある。
(自分が盗撮されるのもいやだけど、自分を通り越して他の人を盗撮されるというのも、それはそれで”私じゃダメなんかい!!”と、かなり嫌なものである。)

もちろん同じくらいNちゃんには助けてもらってここまできているので、持ちつ持たれつ、これからも何かNちゃんが困ったことがあればいつでも助けるつもりだ。


気のおけない友人たちとの楽しい食事は進み、ワインも次々に空き、宴もたけなわになった頃ふとNちゃんのお皿を見ると、隅っこにコソッとチーズが寄せてあることに気がついた。

ここで母の教えを忠実に守ってきた私はここでピンときた。
”あ、Nちゃんチーズ嫌いなんだ。
でも、チーズ好きの人を嫌な気分にさせないようにそっと隅に隠しているんだ”

と。

よし、ここは私に任せとけ。
私、チーズ大好物だから。
この場の雰囲気を壊さないように、証拠隠滅してあげる!


奮い立つ私の母性本能。
きっとみんなが美味しい美味しいって言って食べている中、残してしまって心苦しい思いをしてしまっている気が優しいNちゃんを助けてあげなければ。
私はNちゃんのお皿に手を伸ばし、ごそっとチーズをフォークですくい上げて一口で平らげてあげた。

その瞬間Nちゃんはびっくりしたような顔でこちらを振り返ったが

”はい、隠滅完了!
いいのよ、何も言わなくて。困った時はお互い様!”


なんて、軽く頷きながら目でサイン送ったよね。
なんならウィンクしながら指バッキュンするくらいの勢いで。

「あー!華子何すんのー!?チーズ好きだから最後に食べようと思って取っておいたのにー!」

Nちゃんの悲痛な叫びがほどなく聞こえたけど、時すでに遅し。
いい加減モグモグしちゃってたから、もう返却できません。

だって、お皿の隅にコソッとまとめてあるのって嫌いで食べられないってことなんでしょ?
嫌いだから残してあったんじゃないの??

私はね、好物は先に食べた方がいいと思うのよ。
お腹が空いている最初のうちに好きなものを食べた方が、より美味しく感じるじゃない?
それに食事中とはいえ、人生いつ何が起きるか分からないんだし。
次の瞬間、黒電話の将軍様がテポドンあたりぶっ放して、レストランごと吹っ飛ばされるかも知れないし。
私みたいな奴にいつ奪われちゃうか分からないことだしね。
美味しいものは絶対に先に食べるべき!

この私たちのやりとりを聞いてさらにその場は盛り上がりを見せたし、Nちゃんも笑って許してくれたから良かったんだけど、自分の中の常識は他人の非常識って痛感した。
ごめんね、Nちゃん。

後日Nちゃんには世界中の美味しいチーズの詰め合わせをプレゼントしたが、あれ以来彼女が真っ先にチーズを食べるようになったことは言うまでもない。

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