【セミ】アブ=ラタロウの一生

考察

夏休みで時間を持て余しているから、と友人が小学生のお子さんを連れてうちに遊びに来たのだが、生命力や好奇心がどんなに押さえ込もうとしても溢れ出ちゃってもう大変!って感じの子で。
寸時たりともじっとしていないし、延々と喋り続ける。

たまに見る分には”元気があって素晴らしい”と思えるけど、こりゃお母さんは気が休まるときなくて疲れちゃうだろうな。
世の中のお母さん方、お疲れ様でございます・・・

そんな元気のいい子だったのだが、みんなで外を歩いているときに道端でひっくり返ってジージー鳴いているセミを見つけた途端、急に動きを止め、その場にしゃがみ込んでしまった。

「セミって土の中で5年も我慢して、やっと地上に出たと思ったら1週間で死んじゃうんでしょ?かわいそう(涙)」

どうやら優しい心の持ち主らしい。
でもこれから腐る程目に入るであろうセミの亡骸を見るたびにおセンチになっていたら、身が持たないわよ?

って事で、不肖の身ではございますが、私、華子4X歳が普段あまり語られることのないセミの真実の真実を語ってあげましたよ。
以下、お時間ある方のみお付き合い下さい。

どうも、ぼくの名前はアブ=ラタロウ。
みんなにはアブちゃんって呼ばれているセミだよ。
今日はぼくたちセミの一生をご紹介するね!

フジミ公園の、奥から2番目くらいの大きな梅の木の下がぼくの住所。
もうすぐ念願のボーナスラウンドに進む時がやってくるんだ。
ボーナスラウンドっていうのは後で詳しく説明するけど、もう今から楽しみで楽しみでしょうがないよ!

ぼくたちセミは物心つく頃には地中にいるんだけど、とりあえず1年目は食べまくるのが仕事。
先に生まれている先輩たちに応援されながらひたすら栄養をつけて、体力をつけるんだ。
噂によると人間界はものを食べるっていうのは、買い物に行ったり料理したりしなくちゃいけないから手間がかかって大変らしいけど、ぼくらはそんなことないんだ。
なんせ目の前にぶら下がっている木の根っこをチューって吸えばいいだけなんだから。
めっちゃ楽。

2年目はひたすら後輩の面倒を見るよね。
まだうまく食べられなくて口の周りに樹液をべたべたにつけていたりする子もいて可愛いんだ。
そういう時は手元にある土を取って口の周りを拭いてやるんだ。
「ほらほら、こぼさないでしっかり食べて体を大きくするんだぞ⭐️」
とか言いながら。

3年目になるとある程度体も大きくなるから、そこら辺を行き交うもぐらやミミズにも気がついてもらえるようになって世界がグッと広がるよね。
彼らはたまにうっかり人間界に飛び出ちゃったりするらしいから、情報も豊富に持っている。
なんでも人間っていうのはもぐらが穴から頭出すと、嬉々としてハンマーで殴ってくるらしい。
もぐらはそこで”ピコッ”って言ってあげられるかどうかで、もぐらとしての器の大きさが決まるっていうんだから面倒臭い世界だ。
ぼくはセミに生まれて本当に良かったと、もぐら先輩の頭のタンコブを見て思ったね。

4年目はお待ちかねの恋の季節だ。
ここら辺で大体自分はオスなのかメスなのか、みんな気がついてくるんだ。
ぼくはオスだから、ちょうど隣にいたミンミンちゃんとくっついたよね。
もし隣がオスだったら一つ飛ばしてニイニイちゃんとくっついていたかも。ニイニイちゃん、小柄で可愛い子だったし。
でもまあ、ミンミンちゃんとカップルになったので彼女といろんな話をして楽しんだ。
「ボーナスラウンドでは声出し頑張ってねー、応援してるよ」
とか
「上手に羽化するには両肩の関節を軽く外すといいらしいよー」
とか。

そんなこんなしてるとあっという間に5年目ですよ。
セミとしての人生のラストスパート。
ボーナスラウンドで高得点を取るためにひたすらボイトレに励む日々を送る。
と言っても実際に声を出すと口の中に土が入っちゃうので、あくまでイメージトレーニングに留めておくけどね。

ぼくたちセミは土の中で死ぬとみんなの邪魔になっちゃうので、地上に出て死ぬ。
この地上に出てから死ぬまでの期間をボーナスラウンドとぼくたちは呼んで、とても楽しみにしているんだ。
なぜ楽しみかって?

地上に出て大きな声を出し続けて、人間に”うるさいな”と言わせるごとに一回50点
歩いている人間におしっこをひっかけられたら100点
という風にポイント制で、得点が高い順に
レジェンド』『キング』『鉄人
とクラス分けされ、次に転生する木の種類がそのクラスによって
』『』『
と振り分けられるゲームが開催されているからなんだ。
松の木の下は湿度管理が徹底されていて快適らしいし、容姿端麗なセミたちが集まるらしいからやっぱりレジェンド、目指したいよね。

ちなみに、ひっくり返って死んだフリして人間が近寄ってきたときに全力でジージー鳴いて人間を飛び上らせたら無条件で『神』クラスに入れるっていう裏技もあるらしいんだ。
『神』クラスには人間の死体が埋まっているという噂の『桜』の木の下に転生できるらしいから、ぼくも密かに目指しちゃおうかなと思っている。
人間はいい液出しそうだもんね、栄養たっぷりだ!

「アブちゃーん、そろそろ出番よー!」

おっ、ミンミンが呼んでる。やっとぼくのボーナスラウンドの番が回ってきたらしい。
じゃあ、元気に行ってくるよ、またね!


また華子は適当なこと言って(笑)と友人は笑っていたが、この話を聞いたお子さんは笑いつつもまんざらでもなさそうな顔をしていた。
これで死骸見るたびに悲しくなることもないだろうし、死んだと思っていたセミが急にジージー動き出しても動じない大人になるんじゃない?

追記;いないとは思うけどこの話、真剣ににお子様に伝えたりしないでくださいね。私の妄想ですので。精一杯生きるセミの姿、昆虫たちの姿を通して子どもたちに大事なものを感じ取ってほしいという方は真面目な本をどうぞ↓

考察
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