【文香】いい女になりたければ手紙を書け

考察

意中のあの人に印象付けたい。そんな時は手紙を書けば?

昨今ペンを持って文字を書く、という行為から遠ざかっている人は多いのではないだろうか。
かく言う私もその一人なんだが。
しかし便箋にしたためられた文字というのはLINEやメールにはない威力がある。
そのことをあらわす一例について今回は書いてみたいと思う。

携帯がない時の連絡手段

あれはもう二十年ほど前、私とパパが半同棲みたいな生活を送っていた頃の話だ。私の父は “THE日本の頑固親父” と言った感じの古い考えを持った人で、

『女の幸せは結婚して子供を持つこと』
『女に学は必要ない』
『結婚前に男性とお付き合いをするなんてとんでもない』 etc…

そんなこと今の若者に言ったら鼻で笑われて終わりだよ、というようなお説教を毎日聞かされて私は育った。

だからもちろんパパとの関係も秘密。
私は「仕事が忙しいから」と言って家にほとんど帰らず、パパのところにこっそり通う日々を送っていた。

いつものようにパパのところで二人でテレビなんか見てくつろいでいたある休日のこと。
冷蔵庫のお茶のストックが切れている事に気がついたパパは

若かりし頃のパパ
若かりし頃のパパ

ちょっとコンビニに行ってくるわ

とサンダルをひっかけて出かけて行った。
彼はとても身軽な人で、急ぎの用事でなくても何かというとすぐに外に出かけていく。おそらく家でタバコを吸われることを嫌う私に気を使って、公園かどこかでタバコを吸っているのだろう。
いつも出かけると “絶対お茶を買っているだけじゃないよね?” っていうほど長い時間帰ってこないもの。

ここまではいつものことだったんだけど、この日は彼が出かけて程なくして私のガラケーが鳴った。
私に連絡をよこしてくるような友人たちとは大抵はメールで済ませていたため、電話がかかってくるなんていうことはほとんどなく、聞き慣れない自分の携帯の着信音に一体何事かと驚いた。

着信画面に表示されていたのは父の名前。
一気に血の気が引いた。
父から電話はおろか、メールすらもらったことなんてなかったので何か大事があったに違いないとすぐに電話に出た。

要件は”遠縁の親戚が急に家に顔を出しに来たからお前も今すぐ戻ってきて挨拶しなさい” というものだったのだが、家族の誰かが事故にあったとか深刻な内容を覚悟していた私は、なんだそんなことかと心底安堵したのを覚えている。
しかし、ここで問題が一つ。
ちょっとそこまで、とパパは携帯を家に置いたまま出かけて行ってしまっていたのだ。

すぐに自宅に戻らなくてはならなかったのだが、彼にどうやって伝えよう。
彼が帰ってきて私がいなかったら心配をかけてしまうだろう。

直筆の手紙の持つインパクト

そこで、私は電話が置いてある棚の引き出しの片隅に置いてあった桐の箱を取り出した。
中には一筆箋文香を入れてあって、いつでもちょっとした一言を添えたい時に使えるよう準備してあったのだ。

 私は自分の体に香水をつけるのは好みではないのだが、手紙からフワッと和の香りが舞うのは大好きだった。
自分が初めて香を焚き染めたお手紙を年配の女性からいただいた時に、その方の品とセンスの高さがそれだけで伝わった気がして、それ以来私も便箋には文香をいつも添えるようにしていた。

決して長い文章ではなく、簡単に
急用が出来てしまったので一度自宅に戻ります。
ごめんね、すぐに帰ってくるから待っていてね。」

とだけ書いた一枚の一筆箋。

それまで私から紙に書いた手紙をもらったことがなかった彼だが、二十年近くたった今でもお財布にこの一枚の紙を忍ばせているのを私は知っている。
何度お財布を新しいものに買い替えても、必ずこの紙もお札やカードと共に毎回移し替えてくれている。

聞いたことがないので理由はわからないが、それだけインパクトが強かったということは確かだろう。

考えてもみて欲しい。
知人に送るメールやLINEのメッセージで二十年もとっておいてもらえるものってあるだろうか。
逆に時代を作ってきた偉人たちの書いた手紙は現代でも残っていて多くの人の心を動かし続けているし、今後もずっと大切に受け継がれていくだろう。

確かに字の汚さだったり、書き損じを心配したりしなくていいLINEやメールは便利。
手軽に気持ちを伝えることができる大事なツールの一つだ。

でもやっぱり大切な人の印象に残りたいと私は思うので、ここぞという時には文香を添えた便箋を取り出して手紙をしたためたいなと思う。

考察 行動
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